廃工場を写した8mmフィルム(大阪府) | 怖い話まとめ【日本全国47都道府県別】

廃工場を写した8mmフィルム(大阪府)

三十年ほど前。

Nさんが、8ミリフィルムで自主映画を製作した。

ロケ地は大阪郊外の工場跡だった。

工場は廃屋となってずいぶんたっているようで、建物はボロボロ、廃材なども腐ったり錆びたりしていた。しかし、それが映画の素材としては面白いものだった。

夕方の撮影だった。

情景カットの撮影にも三分用のフィルムを一本全部回したという。

現像が上がった。

Nさんが編集機にフィルムをかけてみると、フィルムは真っ黒だ。

「ありゃ、失敗したかな」

いや……、そうでもない。たまに白い煙のようなものが写り込んでいる。しかしそんなものを撮った覚えはない。

Nさんはこのフィルム全部を諦めて、撮り直しのスケジュールを考えはじめた。

そこに、手伝ってくれた友人から電話があった。

「どや、きれいに撮れとったやろ?」と言う。

「それどころちゃうで。あれ全部パーや」

「えっ?」

「ほんまや、黒うて何にも写ってなかったわ」

「そんなはずないやろ。なんぼ性能が悪い8ミリ言うても、夕日もあったし……。ライトも照らしたやん。何も写ってないって、どういうことや?」

「もう、こっちが聞きたいわ。噓や思うんやったら見に来てみ」

その夜、友人たちが映写機をもってNさんの家にやって来た。

スクリーンでみると真っ黒ではなかった。何か写っている。

いや、それより変なことがある。現像が上がったばかりの新しいフィルムなのにいくつもの縦のキズが入っている。まるで古いフィルムを見ているような〝雨降り〟状態。

(何やこのキズ?さっきはなかったで?)とNさんが首をひねった。

そのキズだらけのフィルムには見覚えのないものが写っている。工場の内部のようではあるが、工員が何人もいて、鉄骨のようなものに溶接作業をしている。それが延々写っているのだ。

「何?これ……」

あっという間に三分間のフィルムが終了して、映写機のリールがカラカラ回りだした。

「……ちょっと待て、今の、何?」

「わからん……」

「フィルム間違えてへんか?」

ロールナンバーを見るが、間違っていない。

「もういっぺん見てみるか?」

また映写機にフィルムを装塡して、回してみた。

やはり傷だらけのフィルム。やがて工場の内部が写って、工員が溶接している光が飛び散る。それが延々三分間続く。

ええっ!というこれまでとは違う驚きの空気が部屋中にした。

一度目に見たフィルムと印象が違う。

違うはずだ、手前にいる工員が先ほどと違う場所に移動して作業をしている。

(さっきのフィルムの続きだ)

フィルムが終わった。

「おい、今の……」と言いかけた友人を「何なんも言うな!」とNさんは制した。あまりにも物理的にありえないことを認めたくなかった。

そのフィルムは二度と見ないようにしまい込んで、今はそのフィルムが部屋のどこにあるのかすらわからないという。