屯田墓地に眠る魂(北海道石狩市) | 怖い話まとめ【日本全国47都道府県別】

屯田墓地に眠る魂(北海道石狩市)

石狩市の花川東に屯田墓地がある。

その名の通り開拓に尽力した屯田兵もここに眠っている。

現代の墓地とは違い整備されている訳ではなく、林の中に古いお墓から新しいお墓が点在している。

肝試しに訪れる者も多く、数多くの心霊体験が報告されている場所である。

山内さんは友人の太一とともに、肝試しにきた。

霊の存在を信じていない二人は、ここで怖い目にあったという友人達を黙らせるべく、意気揚々と訪れたのである。

駐車スペースに車を駐め、それらしい時間になるまで待機する。

「あいつらが来たのって、二時過ぎって言ってたよな」

「早く来過ぎだろ、俺ら」

煙草を吹かしながら、懐中電灯が点くかどうかを試す。

「あれっ?点かねぇわ」

仕方がないと、近くのコンビニまで電池を買いに車を走らせる。

「ちゃんと新しいの入れてこいよ」

しかし、太一は新品を入れてきたと言い張る。

「じゃあ……これも霊の仕業……」

そう言った後、二人は爆笑した。

屯田墓地まで戻ると、段々面倒くさくなってきた。

「二時じゃねぇけど行くか」

結局、一時前に二人の肝試しはスタートした。

区画整理されていない墓地の並びは、少し違和感を覚える。

それでも所詮、墓地は墓地。

人は死んだら終わりだし、魂とか霊とか馬鹿らしい。

缶コーヒー片手に、煙草を咥えたスタイルで二人の肝試しは続く。

五分ほど歩いただろうか。

「なぁーんも起きねぇな」

山内さんは完全に飽きているようで、だらしなく欠伸をする。

「馬鹿!霊を馬鹿にしたら呪われるけど、俺らは馬鹿にしてないからなんも起きねぇんだよ」

またそれで爆笑した。

「しょーがねぇな、じゃあ馬鹿にするタイムの始まりにしますか」

太一は古い小さな石のお墓に片足を乗せて記念撮影をする。

山内さんは張り手を食らわせるポーズで撮影をする。

「やっぱ何も起きねぇじゃん」

飲み切った缶コーヒーの殻をその辺に投げ捨て、煙草の吸い殻は踏み潰した。

更に奥に進むと、墓石が一層雑然としてくる。

太一は、意図せず小さな石の墓に足を引っかけ、倒してしまった。

「あーらら、やっちゃった。君、呪われが決定!」

「僕、呪いが怖いので、ちゃんと直します」

そう言いながら、墓石を前後逆に戻した。

ひとしきり笑っていると、空気の変化に気付いた。

二人を取り囲むようにざわつきというか、小さな話し声が聞こえる。

「おいおい、マジかよ」

緊張の余り、喉が渇き張り付く。

太一は首を振りまくり、周囲を警戒していた。

十分程張りつめた時間が続くと、音と気配が消えた。

「なんだよぉー、俺らにビビった?」

口では強がるが、二人の足は震えていた。

「じゃあ、そろそろ帰るとしますか」

急ぎ足で墓地の中を進む。

突然、太一が何かに躓つまずき転んだ。

相当痛かったのか、右膝を抱え込みながら呻いている。

「おい、大丈夫かよ?」

太一が躓いた物を見て、山内さんは青褪めた。

先程、前後逆にした墓石だったのである。

「歩けるか?じゃあ、早く行くぞ」

右足を引き摺りながら必死に歩く太一。

苦悶に歪んだ顔が、その痛みを表していた。

「よし、もう少しで車だ……」

安堵した瞬間、また太一が転ぶ。

今度は絶叫し、その場でのた打ち回っている。

山内さんの視界に入る墓石。

……間違いなく同じ石が、前後逆向きで倒れていた。

今度こそ太一は歩けそうもない。

おぶっていこうとするが、膝の痛みが強いのだろう、絶叫しながら酷く抵抗する。

『ザッ、ザッザッ……』

瞬間、背後から大勢の人が急ぎ足で近寄ってくる音がした。

山内さんは力ずくで太一を引き摺り車まで急ぐ。

叫び声と無数の足音が山内さんの耳に響き続ける、地獄のような時間だった。

太一を車に押し込み、その場から走り去った。

「家まで送ろうとしたんですけど」

あまりに痛がるので、行き先を救急病院に変えた。

病院で冷静さを取り戻してみると、太一の両膝から下は通常ではあり得ない角度に歪んでいた。

結局、太一は転院し、暫く入院生活を送ることになった。

山内さんはそれから太一と疎遠になっていく。

退院した太一の両足は不自由になり、元の生活には戻れないことが分かったからだ。

転んだ時点で、太一の両足はダメになっていたのかもしれない。

しかし、引き摺ったことで、とどめを刺してしまったのかもしれないという山内さんの中の罪悪感が、二人の間に距離を作った。

「やっぱり、舐めたり馬鹿にしたらダメなんですよ。本当に」

……似たようなことをした二人。

ただ、どうして太一だけが酷いことになったのかは未だに分からないままになっている。