恵庭公園に浮かび続けるモノ(北海道恵庭公園) | 怖い話まとめ【日本全国47都道府県別】

恵庭公園に浮かび続けるモノ(北海道恵庭公園)

ここは過去に首つり自殺をした者が多く、その霊を目撃したり動画撮影したという報告例も枚挙に暇がない。

また過去に遺跡が発掘されたことでも知られている。

千葉さんはある夏の深夜、一人でこの場所を訪れていた。

本当は友人を交えて肝試しをする予定だったが、幽霊を信じていることを馬鹿にされ、ドタキャンを食らったのである。

千葉さん自身に霊体験はなかったが、あからさまな言われように腹が立った。

意地でも何かを撮影してやろうと、スマホを片手に散策を始めた。

いざあちこちをうろついてみるが、霊感がある訳ではないので、ここぞという場所とタイミングが分からない。

結局、適当に景色を映しまくり、運よく映り込むことを願って歩き回った。

一時間も散策を続けると、流石に疲れてきた。

何の成果も残せないまま帰ることになるのかと諦めかけたとき、視界の先に人の足が入り込んだ。

スマホを構えながら確認すると、男性の縊死体が樹にぶら下がっていた。

一瞬、霊だと期待はしたが、これはこれで友人を黙らせることができる。

悪趣味だとは知りつつも、色んな角度から撮影を試みた。

結構な高さの枝にロープを括り付けているのか、表情が上手く入らない。

片手に持った懐中電灯で縊死体の顔を照らし出した。

その瞬間、千葉さんは飛び退き腰を抜かす。

その顔は明らかな怒りを示していた。

死体だと思っていたが、口を動かし何かをこちらに伝えようとしていた。

(生きてる!っていうか首吊ったばかりなのか?)

「す、すみません」

慌ててその場から離れようとしたが、腰が抜けて立ち上がることができない。

千葉さんは這いつくばりながら必死で逃げ出していた。

途中、結構離れただろうと振り返る。

しかし、千葉さんの視界に入ってきたのは先程と変わらず、奇妙な果実さながらにぶら下がっている男の身体である。

そこで漸く冷静な思考を取り戻す。

(これは通報するべきなのだろうか)

警察に連絡をしても、こんな時間にうろついている時点で不審者扱いされるのは間違いない。

現時点で息絶えているかもしれないが、仮に生きていたとしたら何かの罪に問われないのだろうか。

千葉さんはその場で考え込んだ。

漸く出した結論は、何も見なかったということ。

明日には発見されるだろうし、あの怒りの表情は邪魔をするなということに違いない。

千葉さんはまた這いつくばりながら、車へと移動を始めた。

少しすると眼前に浮かぶ両足が目に入った。

恐る恐る視線を上部に上げていく。

見覚えのあるズボン、見覚えのある服。

その先には先程の男の顔があった。

同じように怒りの表情を浮かべながら、口をパクパクと動かしている。

瞬時に振り返り、男がいた場所を確認する。

やはりそこにもぶら下がっている身体があった。

ではこの男は何であろう。

頭がパニックに陥り、逃げ出すことも忘れてしまった。

男の首はにゅーっと下へ垂れてくる。

身体はそのままの状態で、ぶら下がっているのに口を動かしながら顔がどんどんと近付いてきた。

千葉さんの顔と男の顔がぶつかりそうになった瞬間、『馬鹿にしてんじゃねぇよ』という声が小さく聞こえた。

そしてそのまま記憶が飛んだ。

我に返ったとき、千葉さんはハンドルを握り車を走らせていた。

方向的に家に向かっていたようである。

家に着いても暫くは落ち着きを取り戻せなかった。

何度もあの顔が思い出され、男の声がリフレインした。

会社も三日程休むはめになった。

ひと月ほど経った頃、千葉さんの脳内では夢を見たんだということで折り合いを付けていた。

しかしそうなると、撮影した動画が酷く気になり始める。

意を決し、動画を再生してみた。

そこには夜間の公園が映るだけで、縊死体のようなものは一切映っていない。

撮影時間が終わろうとしたとき、画像が大きく歪ゆがみ変形した男の顔が入り込んだ。

『馬鹿にしてんじゃねぇよ』

その声ははっきりと聞こえた。

すぐさま動画を削除し、何もなかったと強く自分に言い聞かせた。

しかしそれからも千葉さんの視界には男が現れるようになる。

夜間に限られるのだが、場所を問わず力の抜けた身体が宙に浮かんでいる。

首だけが千葉さんに伸びるように近付き、同じ言葉を繰り返す。

千葉さんの精神はどんどん病んでいった。

日常の生活もままならなくなり、会社も辞めた。

心配してくれる友人をも拒絶し、家に引き籠もるようになってしまった。

独り暮らしであることから食事も気分でしか取らない。

あの男が現れたときには布団を被ってやり過ごす。

そんな生活を続けた結果、体重も落ち続けた。

洗面所の鏡に映る自分の顔を見て、痩せこけた姿に笑いが止まらないときもあった。

目減りしていく貯金を考えれば不安になりそうなものだが、千葉さんにはその頭がなかった。

そしてある晩に決意をする。

「さて、行きますか……」

車を走らせ、恵庭公園へ向かう。

ロープの用意はできなかったので、ビニール紐を片手に導かれるように歩を進めた。

辿り着いたのはあの男を見つけた場所。

慣れない手つきで枝に何とか紐を通す。

首を掛け、足場にした石から身体を投げ出した。

その瞬間、あの男が目の前に現れた。

宙に浮いたまま嫌らしい笑みを浮かべている。

悶絶しながらも千葉さんも笑い返す。

首が締まり声を出せないが、心の中で〈ざまあみろ〉と言い続けた。

そして意識が途絶えた。

次に気付いたとき、千葉さんは猛烈に咳き込んでいた。

ビニール紐はその場から消えており、身体は地面に倒れていた。

喉が焼けるように熱く痛む。

暫くの間その場で苦しみ、徐々に落ち着きを取り戻していった。

自分の取った行動は記憶にある。

ただ、どうしてそのようなことをしでかしたのかは自分でも理解ができない。

死を選んだ恐怖と、一矢報いてやったという満足感が綯交ぜになった感情が残っていた。

その日からあの男が現れなくなった訳ではない。

頻度は減ったが、姿を見せ続けている。

ただ、あの言葉だけは言わなくなっていた。

いや、言わせないというのが正しいのかもしれない。

男が姿を見せた瞬間に、千葉さんのほうが先に言葉を発するのだ。

「馬鹿にすんなよ。ざまあみやがれ!」

千葉さんも徐々に体調が戻り、体重も増え始めている。

ただ、友人達からは距離を置かれるようになった。

千葉さんに自覚はないが、性格が変わってしまったと言われているらしい。

「まあ、別に構わないって話ですよ」

現在、就職活動を続けているが、どうにも面接を通過することができないでいる。